国税庁の統計データ(民間給与実態統計調査結果)によると、サラリーマンの平均年収が意外と高い...
しかし、僕も含め周りを見ても平均より下回っているのでそんな実感はありません。
また、ハローワークや転職サイトに掲載されている会社を見ても同様、平均よりも低いです。
統計データの平均年収は、どんな仕組み(からくり)で算出しているの?
国税庁の統計データによると、平成30年のサラリーマンの平均年収は、441万円です。
前年の平成29年に関しては、432万円とのことですから約9万円もアップしていることになります。
世間の所得が上がったかのように思われますが、実際のところそんな実感はないですよね。
一体どんな方法で平均年収を求めているんだろうかと、モヤモヤした気持ちになりませんか?
この記事では、「国税庁の平成30年分民間給与実態統計調査結果」をもとに、サラリーマンの平均年収とその算出のしくみ(からくり)を解説していきます。
サラリーマン全体の平均年収は上昇傾向
冒頭でも書いたように、平成30年のサラリーマン全体の平均年収は441万円。
近年では上昇傾向なのです。
過去2年間のサラリーマン全体の平均年収も合わせて見てみましょう。
()内は対前年上昇率です。
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 |
421万円 | 432万円(2.5%⬆︎) | 441万円(2%⬆︎) |
上表の通り、サラリーマン全体の平均年収は上昇傾向です。
しかも対前年上昇率も、平成29年では2.5%、平成30年では2%もアップしています。
過去10年間を見ると2%代の上昇率なんてありませんでした。
一見景気が良いように見えて、実際にはそう感じていない方も多いはずではないでしょうか。
次節「男女別の平均年収」と「年代別の平均年収」も解説していきます。
男女別の平均年収
サラリーマン男性の平均年収も上昇傾向
サラリーマン男性の平均年収も上昇傾向です。
()内は対前年上昇率です。
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 |
521万円 | 531万円(2%⬆︎) | 545万円(2.5%⬆︎) |
上表の通り、サラリーマン男性の平均年収は上昇傾向です。
対前年上昇率も、平成29年では2%、平成30年では2.5%もアップしています。
このように、サラリーマン男性の平均年収は、先ほど解説したサラリーマン全体の平均年収よりも100万円ほど高いです。
実際の年収やハローワークなどの求人情報とはかけ離れたものとなり、統計データは正しいの?と疑う気持ちもわかります。
サラリーマン女性(OL)の平均年収も上昇傾向
サラリーマン女性(OL)の平均年収も上昇傾向です。
()内は対前年上昇率です。
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 |
279万円 | 287万円(2.6%⬆︎) | 293万円(2.1%⬆︎) |
上表の通り、サラリーマン女性(OL)の平均年収も上昇傾向です。
対前年上昇率も、平成29年では2.6%、平成30年では2.1%もアップしています。
平成29年の2.6%は、過去10年(全体、男、女)で最高の上昇率。
とはいえ、サラリーマン女性(OL)の平均年収は、先ほど解説したサラリーマン全体の平均年収よりも150万円ほど低いです。
またサラリーマン男性の平均年収よりも220〜230万円ほども低いのです。
まだまだ日本では、男性女性の賃金格差や昇進率が低いことがわかりますよね。
参考:男女共同参画局
年代別の平均年収
各年代別の平均年収を調べました。
青線が男性、赤線が女性、黄色が全体の平均年収です。
(横軸の単位は万円)
男性は年齢とともに平均年収は上がり、50歳代がピークとなっています。
一方女性の方は、各年齢で大きな変動はみられないことです。
また、女性は年齢が上がるにつれて、平均年収との幅が広がります。
女性も男性と同じように、年齢の上昇とともに年収も上がっていけば、その平均年収も上がることになりますね。
様々な角度から、サラリーマンの平均年収をみてきました。
次節では、「サラリーマンの平均年収算出のしくみ(からくり)」を解説していきます。
サラリーマンの平均年収算出のしくみ(からくり)
サラリーマンの平均年収は、どんな仕組みで算出されているのでしょうか。
以下の観点から順番に解説していきます。
- 調査対象の企業と対象社員
- 平均年収の計算方法
調査対象の企業と対象社員
国税庁の「民間給与実態統計調査結果」では、その調査対象者を以下のように書いています。
源泉徴収義務者(民間の事業所に限る)に勤務している給与所得者(所得税の納税の有無を問わない。)を対象としている
源泉徴収義務者とは、民間事業所(会社)のことを指していますから、大企業から中小企業までの全ての会社が当てはまります。
また、給与所得者とは以下の通りです。
- 正規社員(役員は除く従業員)
- 非正規社員(契約社員、パート、アルバイト含む従業員)
さらに、会社から給与をもらった月数が12か月(例えば平成30年1月〜同年12月)の社員を対象としているので、丸1年の勤務がある社員としています。
ですので、短期的な勤務の方や、年の途中で退職した方は含まれません。
ちなみに平成30年の源泉徴収義務者(民間事業所)は354万件、給与所得者数(1年を通じて勤務)は5,026万人となっています。
また、5,026万人の給与所得者(1年を通じて勤務した者)に支払われた給与総額は、221兆5,281億円です。
平均年収の計算方法
国税庁の「民間給与実態統計調査結果」では、平均年収の計算方法を以下のように書いています。
給与支給総額を給与所得者数で除したものである。
給与支給総額とは、基本給に加えて各種手当(家族手当など)、残業代やボーナスも含み、源泉徴収前の税金(所得税、住民税)、各種社会保険料(健康・厚生・雇用)等を含む総支給額のことです。
含まれないものとしては、退職金や役員の給与です。
ですから平均年収とは、この給与支給総額を給与所得者数で割った(除した)ものとしています。
では、平成30年のデータで計算してみましょう。
平成30年平均年収=給与支給総額 / 給与所得者数(1年を通じて勤務した者)
=221兆5,281億円 / 5,026万人
=440.76422.... ≒ 441万円
よって、平成30年のサラリーマン平均年収は441万円となります。
以上、平均年収について解説してきました、これといっておかしな計算方法ではなかったはず。
ですが、統計データの平均年収は、なぜこれほどまでに世間一般の思いとかけ離れているのでしょうか?
年収は「中央値」で出す方が納得できる。
結論をいいますが、僕たち一般庶民にとっての年収は「平均値」よりも「中央値」を公表する方が理解できます。
なぜなら、「平均値」とは全体のデータ値をすべて足して、その総数で割った値のこと。
大きな値があるとそれに影響されてしまうのです。
他方、「中央値」であればその影響は少ないのです。
実際に「平均値」と「中央値」を簡単な例で計算し説明します。
平均値と中央値
平均値とは
平均値の例を下記に示します。
以下の7つの年収データがあるとして...
200万円、300万円、400万円、500万円、1000万円、1500万円、3000万円
平均値は、985万円
200万円の年収があるにも関わらず、平均は985万円は高額です。
つまり「平均値」は、特に高い年収があるとそれにつられて「平均値」も大きくなるという特徴があるのです。
ですから、高額収入の社員がたくさん出始めたら、平均も上がっていきます。
だから
「自分の年収は平均年収よりも少ないのか...」
「副業やアルバイトなどをやって、世間の平均年収に近づけないと...」
と不安になったり不甲斐なさも感じますよね。
中央値とは
同じように、「中央値」の計算例を示します。
以下の7つの年収データがあるとして...
200万円、300万円、400万円、500万円、1000万円、1500万円、3000万円
中央値はデータを小さいものから並べたとき、中央に来る値のこと。
ですので中央値は、500万円
前節の「平均値」である985万円に比べると、「中央値」の500万円の方が僕たち一般庶民にとっては納得のいく年収ではないでしょうか。
ですから、国税庁の統計データである平均年収(441万円)も、これまで解説したように高額年収データがあることにより、つられて算出されたものであることがわかりますよね。
以上、「平均値」と「中央値」の計算例を簡単にしてきました。
次節では、実際に国税庁の統計データから年収の「中央値」をざっくりと求めてみます。
年収の中央値
上図は、国税庁の「民間給与実態統計調査結果(2018年版)」給与階級別分布です。
年収400万円以下の層が54%であることから、中央値は「300万円〜400万円」のところにあるとみるのが妥当です。
このことより中央値は、平均年収(441万円)よりも、最低でも41万円は低いことがわかります。
(厳密には360万円前後だともいわれています)
平均値だと、多数層(年収400万円以下)を超えた値(400万円〜500万円)を指しているので、疑問や誤解を招くのは当然でしょうね。
まとめ
サラリーマンの平均年収と算出のしくみ(からくり)を解説してきました。
- 平成30年のサラリーマンの平均年収は441万円
- 年収を中央値で求めると300万円〜400万円(360万円前後)ですので、平均年収に比べ最低でも40万円の差がある。
このように、平均値と中央値の差が広がってきた背景には、高額年収を得るサラリーマンが昔に比べて顕著に登場してきたという事実もあります。
IT技術など、現代に求められる高度な技術・スキルを持ち合わせた者が稼げるという構造になったのかもしれません。
国税庁の「民間給与実態統計調査」は1949年に始まりましたが、平均年収として公表するのはもう妥当でない時期に来ているように思います。